郊外の工業地域に建つ戸建て住宅である。ハウスメーカーのプランを参考に施主が自作した“一般的な間取り図”を実現することが求められた。プランの重要性を訴え説得するのではなく、眼前にある間取りを与条件として受け止め、咀嚼するような姿勢で建築がつくれないか、という問題設定である。
建物の向き、収納量、キッチン、物干し場、テラスの位置など間取り以外の二次的な要素のレイアウトを検討し、間取りに付加していくという作業を繰り返した。加算的に膨れたヴォリュームを統合するためのスタディが繰り返した結果、外部に対して閉じたヴォリュームではない、開かれた不定形な図形が生まれ、窓から外壁面や袖壁が見え隠れする奥行きのある室内風景が立ち現れた。
一般的な間取り図を共通言語にして対話を重ねながら、用途の特定されない形態が生み出されたわけだが、これは、デザイン監修的な状況においても、新たなるデザインフィールドが広がっていることを意味している。