木造戸建を全面改修したプロジェクトである。セルフビルドを本格的な趣味とする施主からは、可能な限り家づくりの現場へ介入することが求められた。結果として、模型によるスタディ、既存躯体の解体や設備工事の発注、施工の一部、塗装工事などに積極的に施主が参加する、特殊なプロジェクトとなった。
アンコントローラブルな状況のなか、施主の思いを受け止めながらも空間全体のバランスを保つことをめざし、様々の状況を受け入れる「殻」と「中身」を設定し、空間の構成を行っている。左官職人による全面漆喰塗りとした外周壁は、家全体の気積を感じられるおおらかな「殻」であり、「中身」ではセルフビルドのラフさとの相性を配慮し、部材数を減らした極力単純なディティールとしている。施主の行為を演出し、持続させようと試みた結果、つくり手の想像を乗り越える空間の質がたち現れたように思う。
ここで求められたのは、住み手が自ら住まいを作るというプログラムを織り込んだ設計であり、その状況を支援するという複雑な役割であった。