郊外に計画した全9戸の集合住宅。
東京郊外に計画した9戸からなる集合住宅である。郊外特有の茫漠とした風景の中で、建築の自立的な建ち方を模索した。
同じ曲率を繰り返し反復させた曲面の壁には、高さの異なる開口部が設けてあり、内部での生活のシーンを断片化してショールームのように写し出している。また、住戸プランを周辺に対し45°角度を振って計画することで、外周壁と住戸との間にカラとナカミとがずれたような関係をつくり出し、広がりのある空間を獲得している。
各階同一住戸プランの繰り返し、コンパクトにまとめられた北側の共用部、2.7Mスパンの反復など、コストや工期を考慮した一般的で合理的な手立てが、複雑で図式的な形状を支えている。さらに、リゾートホテルのような外観、全住戸かつ全室角部屋、南向きのバルコニー、nLDK形式など、あえて慣習的、一般的な不動産言語に則すことで、幅広い入居者像に対して賃貸物件としての価値の共有を図ろうとした。
既存の枠組みを否定するのではなく、準拠しながらも意味をずらすことで、新しい価値をみつけるような発見的なアプローチを試みている。