郊外のロードサイドに計画した2棟の賃貸集合住宅である。敷地北側には低層建物が点在しており、南側では計画道路の拡幅工事が進行している。計画道路側とその裏側、表と裏の関係に陥らない厚みのある街区計画とする為に、敷地中央に帯状の大きな空地を設け、2棟の建物が対峙する配置計画としている。
低迷する周辺の相場賃料により投下される建設コストは少ない為、同一住戸プランの反復による施工手順の合理化、工期短縮、型枠の再利用などのコスト調整を試みた。また、空間性を評価する賃貸市場が未成熟な郊外において、投資回収リスクを軽減させるため、南面採光やnLDKで表記される慣習的なプランニングをあえて採用している。
そのような状況の中で、前面道路境界に沿う形で建物形状を雁行させ、各部屋の奥行きを変化させた。極めてシンプルな形態操作により、住戸の輪郭を曖昧にし、空間に広がりを与えるとともに、前面道路を通る人や車に対して見る角度により異なる、多様な表情を与えるファサードを獲得している。
郊外の要請を受け入れながらも変容する風景の中で確かな存在としての建築を求めた。